『ふわぁ……ママ、お客さん?』
「うっ!」


(嘘でしょ! もしかして今起きたの?)


 絶妙なタイミングで起きた竜王の卵が、興味津々の声で話しかけてきた。それでももう彼にかまっている暇はない。私はあわててお腹に話しかけた。


「そう! だから絶対に動いちゃダメよ」
『また〜?』


 卵くんはすごく不機嫌そうだけど、なだめている時間はない。カチャリとドアが開く音がして、人が入ってくる気配がした。


(き、来た!)


 あわてて笑顔を作り、顔をあげてドアのほうを見る。コツコツとかすかに靴の音がして、遠目でもわかるくらいスタイルの良い女性が部屋に足を踏み入れた。私を見つけ、大輪の花が咲いたようにほほ笑むその姿は、竜王様と同じくらい美しかった。