「立て」
「は、はいっ!」


 その声に私はあわてて立ち上がった。もう言われた通りにして、私は無害で安全な人間なのだと信用してもらうしかない。そう思って命令通り立ったのだけど、予想に反して竜王の瞳は驚きで大きく見開かれ、周囲からは悲鳴のような声が聞こえてきた。


「あんなに脚を出して娼婦か?」
「竜王様の前で、なんとはしたない!」
「しかも赤の衣を着るなんて! この国で赤を身に着けていいのは竜王様だけだというのに、なんたる不敬!」
「さては平民の女が竜王様の気を引こうと、愚かにもあのような格好で現れたのではないか?」


 どうやら私の服装は、この世界でものすごく非常識らしい。私の全身の姿が見えたとたん、部屋中が批判と嘲笑の嵐になってしまった。


(どうしよう! 赤色は竜王しか着ちゃ駄目だと言われたって、これバイト先の制服だから! それにミニスカートならまだしも、膝丈でもはしたないの? やっぱりここは海外でもなく、いわゆる異世界なのかもしれない……)