(はあ……認めたくないけど、もうこの子に情が湧いてきちゃった)


 だってこの子は私を選んでくれている。あの淋しかった日々を見て、私の家族になりたいって望んでくれているんだ。それを「いらない」なんて突っぱねることは、私にはできそうにない。でも竜王様のお妃になれるとも思えないし……。


「あっ! そうだ! あなたをこっそり産んで、一人で育てるってのはどうだろう?」
『その前にパパと結婚しなきゃ、僕を産めないよ?』
「そ、そうだったわね!」


 私ったらもう妊娠してるような気になってた。そうよね。この子を本当に産むなら、竜王様と結婚して、その……初夜を迎えないといけないんだった。


『それにパパがかわいそうだよ。僕もパパと一緒に暮らしたいし……』
「ご、ごめんなさい! 私ったらつい自分のことばっかり……!」


 まだ生まれてもいない子にたしなめられてしまって、恥ずかしい。この時点で親の資格無しって感じだ。それでも竜王の卵は、私の情けない姿を見ても機嫌が良いらしく、鼻歌を歌っている。