「まぁ、な」


「用事は終わったの?」


「いや、まだ」


「……そっかあ」



そういえば先週奈子に花火大会に一緒に行こうと誘われたけど、全然興味が無くて"用事があるから"って言って行くのを断っていたんだっけ。



「奈子は、花火?」


「うん」



もしかしたら高台のことを知っているだろうか。


そう思って聞こうとした時、奈子が口を開いた。



「向こうにある高台で花火が綺麗に見えるって噂になってるから行こうと思ってたんだけど、すっごい混んでたからやめたの」


「え?」


「二年くらい前までは全然人もいなくて穴場だったらしいんだけど、誰かがSNSに花火の動画投稿したら一気に有名になっちゃったんだって。まぁ、わたしたちもその動画見て知って来たんだけどね」



人多過ぎてすごかったよねー、なんて友達と笑い合っている奈子の肩を掴み、



「それっ……その高台って、どこだ!?」



驚く奈子に詰め寄る。



「え……大雅くん?」


「それ、どうやって行けばいい!?」


「え、なんで……」


「いいから早く!」


「っ……えっと……この道を真っ直ぐ行って、三つ目の信号を曲がった先に入り口があるけど……」



指差された方向は山に続く道で、その先は街灯も無くて真っ暗だ。


教えてもらわなければそこにそんな高台への道があるなんて気が付かないだろう。


言われてみれば、確かに向こうの方はさらに人が多いように見えた。