目の前に広がっていた目的地は、どう見ても私の想像以上のものだった。

茶色のレンガを基調とした、赤い三角屋根の緑の庭に囲まれた大きなお屋敷。
ここは生前、私の両親が住んでいた家みたいだけど…あまりにも広すぎるよ…！？

予想外の出来事に、門の前で一人ぽかんと突っ立っていると急に後ろから声がかけられた。

「君が庭園晴香ちゃんかな？」

驚いて振り返ると、そこには五十代くらいの笑顔を浮かべた一人の男性が立っていた。

なんでこの人、私の名前を知ってるんだろうっ…。

「おっと…急に話しかけてすまない。私は　
　佐々木というんだ！ここ周辺の地域の
　養護施設を管理している者だよ」

そういえば施設を出る前、中嶋先生から施設の代表管理者の人がこれからの生活について色々教えてくれると聞かされてたかも…！

「は、初めまして！庭園晴香と申します！
　中嶋先生から聞いています…！
　今日はどうぞよろしくお願いします！」

慌ててペコリと頭を下げると上からこちらこそよろしくね！と明るい声がかかった。

「よし…挨拶はここまでとしてお家に上が　
　ろうか。君の家族はもう集まっている
　よ！」

「は、はい…！」