終わったんだ、勝負が。



 帰ってきてくれた、龍輝くんが。


 だけど。
 怖い、龍輝くんの姿を見ることが。


「総長は?」

北邑(あいつ)
 もう少しあとで帰るそうだ」


 龍輝くんと海翔さんの会話。
 聞いている、下を向いて。


「ただいま、茉蕗(まろん)
 帰ろう」


 龍輝くんの穏やかでやさしい声。


「おかえり、龍輝くん」


 大丈夫、きっと。
 龍輝くんは。

 そう思いながら。
 見る、龍輝くんの顔を。



 そこには。
 いつも通りの龍輝くんの姿が。


 そのことが。
 嬉しくて。
 ほっとして。


「ごめんな、
 心配かけて」


 龍輝くんは私の頭をやさしくポンポンとする。


「こんなところじゃなくて、
 帰ってからイチャイチャしたら?
 はい、これ茉蕗ちゃんの荷物」


 海翔さんっ、何を言っているのっ⁉

 していないよっ、イチャイチャなんてっ。