入学式と同じく体育館に集められ、新入生歓迎会が始まった。
学園長が指を鳴らすと同時に大量の風船が宙を舞い始めた。
学園長の説明によると、この風船をお腹に挟んで抱きしめ合って割り、その中のカードに書かれた質問に答えて仲を深めろ、ということらしい。
無理だ。
朝はそんなん余裕だし?的な顔をしてみせたが、流石にそれは顔に出る自信しかない!
いや、こんなことしたら拓人だって平常ではいられないはず…。
「じゃあ、やりましょうか。」
嫌だよ待ってよ!昨日はなよなよしてたじゃん!急にキャラ変ですか!?ひどい!
心の中で必死に抗議していると、拓人が耳打ちしてきた。
「抱きしめ合う直前、僕が爪で割るので…。やってるフリだけしましょう。」
それは名案とばかりに、私は上機嫌になり、そこらへんにあった風船を手に取り、拓人と向き合う。
そこで気づいた。
「抱き合わなきゃいけねえのに、手をどうやって風船にくっつけるんだ?」
「え、え?あ、抱き合う…腰に手を回す…?え、あ、そっか!無理ですね!」
穴だらけの策だった!
「いや、強く抱き合えばきっと届きますよ!」
「強く抱き合ったら意味ねーだろアホ!」
うぅ、期待した私がバカだった…。こうなったら真面目に抱き合うしか…。
顔を背けながら、私と拓人の間に風船をセットする。
腰に手を回し、拓人の顔を見上げると、逆光で顔に影が落ちていた。
そうなると、伏せられた長い睫毛や、色っぽい唇に目がいって、胸が高鳴った。
気恥ずかしくなり、顔を背けて、「はやくやっちまおーぜ。」と拓人に声をかける。
「…はい。」
拓人に体を寄せるのと同時に、私の腰にかかった手にも力が加わる。
パン、と音をたてて割れた風船の中からひらりと落ちてきた紙には、今までの恋愛経験は?と書かれていた。
「今までの恋愛経験…一回好きな人ができたぐれーかな。拓人は?」
「え、えーっと…あ、恋愛経験…。ないです、あるわけないじゃないですか。」
「ふーん…。てか気になったんだけどさ?あんたはなんでここ来たわけ?」
「え、ここに来た理由…?なんで…。」
「いや、金儲けに来た割にあんま真剣に見えねーから、金儲けが目的じゃねえのかもと思ってな。」
拓人は少し思い悩む素振りを見せてから、再び口を開いた。
「今まで男子校だったもので、女性と接したことがなく…。女性に対する公平な態度を身につけるためにも、社会に出る前に多く女性と接することは重要かと思ったので…。」
「え、すげぇ!でもこの学校に来るのは振り幅エグすぎねえ?」
拓人の思いがけない行動力に、思わず笑みが溢れる。
「あー、でもそれなら残念だったな。私ほぼ男みてーなもんだから、経験にはなんねーわ。」
「葵さんはすごく女性ですよ!」
少しもどもらずに言い放たれた一言に、私は驚き目を見開いた。
すごく女性なんて変な日本語でも、すごく、嬉しかった。
「ありが……。そうだよ!私は女性だ!」
感謝を口にすることすら恥ずかしくて、叫んで誤魔化した。
すると拓人が忍び笑いをし、
「そういうところですよ。」
と私に言った。どういうところだ?
ちなみに、私たちは意味不明な会話をしていた上風船も一個しか割れなかったので、社内SNSに写真がのることはないのであった。
学園長が指を鳴らすと同時に大量の風船が宙を舞い始めた。
学園長の説明によると、この風船をお腹に挟んで抱きしめ合って割り、その中のカードに書かれた質問に答えて仲を深めろ、ということらしい。
無理だ。
朝はそんなん余裕だし?的な顔をしてみせたが、流石にそれは顔に出る自信しかない!
いや、こんなことしたら拓人だって平常ではいられないはず…。
「じゃあ、やりましょうか。」
嫌だよ待ってよ!昨日はなよなよしてたじゃん!急にキャラ変ですか!?ひどい!
心の中で必死に抗議していると、拓人が耳打ちしてきた。
「抱きしめ合う直前、僕が爪で割るので…。やってるフリだけしましょう。」
それは名案とばかりに、私は上機嫌になり、そこらへんにあった風船を手に取り、拓人と向き合う。
そこで気づいた。
「抱き合わなきゃいけねえのに、手をどうやって風船にくっつけるんだ?」
「え、え?あ、抱き合う…腰に手を回す…?え、あ、そっか!無理ですね!」
穴だらけの策だった!
「いや、強く抱き合えばきっと届きますよ!」
「強く抱き合ったら意味ねーだろアホ!」
うぅ、期待した私がバカだった…。こうなったら真面目に抱き合うしか…。
顔を背けながら、私と拓人の間に風船をセットする。
腰に手を回し、拓人の顔を見上げると、逆光で顔に影が落ちていた。
そうなると、伏せられた長い睫毛や、色っぽい唇に目がいって、胸が高鳴った。
気恥ずかしくなり、顔を背けて、「はやくやっちまおーぜ。」と拓人に声をかける。
「…はい。」
拓人に体を寄せるのと同時に、私の腰にかかった手にも力が加わる。
パン、と音をたてて割れた風船の中からひらりと落ちてきた紙には、今までの恋愛経験は?と書かれていた。
「今までの恋愛経験…一回好きな人ができたぐれーかな。拓人は?」
「え、えーっと…あ、恋愛経験…。ないです、あるわけないじゃないですか。」
「ふーん…。てか気になったんだけどさ?あんたはなんでここ来たわけ?」
「え、ここに来た理由…?なんで…。」
「いや、金儲けに来た割にあんま真剣に見えねーから、金儲けが目的じゃねえのかもと思ってな。」
拓人は少し思い悩む素振りを見せてから、再び口を開いた。
「今まで男子校だったもので、女性と接したことがなく…。女性に対する公平な態度を身につけるためにも、社会に出る前に多く女性と接することは重要かと思ったので…。」
「え、すげぇ!でもこの学校に来るのは振り幅エグすぎねえ?」
拓人の思いがけない行動力に、思わず笑みが溢れる。
「あー、でもそれなら残念だったな。私ほぼ男みてーなもんだから、経験にはなんねーわ。」
「葵さんはすごく女性ですよ!」
少しもどもらずに言い放たれた一言に、私は驚き目を見開いた。
すごく女性なんて変な日本語でも、すごく、嬉しかった。
「ありが……。そうだよ!私は女性だ!」
感謝を口にすることすら恥ずかしくて、叫んで誤魔化した。
すると拓人が忍び笑いをし、
「そういうところですよ。」
と私に言った。どういうところだ?
ちなみに、私たちは意味不明な会話をしていた上風船も一個しか割れなかったので、社内SNSに写真がのることはないのであった。