無愛想な挨拶の後、必要最低限の会話だけで済ませた初日が終わり、同棲二日目がやってきた。

私は購買で買ったパンを齧りながらスマホを眺める。そこには、セブンオーシャンの社内SNSに載ったカップルの姿があった。

「初日からバックハグって…。やっぱデステニーって本物だったのか?いや、私のとこだけバグが起きた可能性も…。」

「何見てるんですか?」

急に至近距離で声が響いて、私は声も出せずに身を引いた。後ろを見ると、拓人が私のスマホを眺めていた。

「え、初日からもうこんなに差がつくんですね…。」

「それは嫌味か?あと近い。」

「え、嫌味じゃない…ってうわぁ!ホントだ!近かったですね!すいません!すいません!」

拓人が超高速で頭を下げながら謝り始めた。首がもげそう。

「うるせえ黙れ。別に多少近いくらい何とも思わねえから。あと、謝りすぎるのウザいから。やめろ。」

私の毒舌っぷりに、拓人は口を開けた間抜け面を披露する。

「えっと…分かりました。そのパンって購買のですよね?僕も買ってきますね…。」

そう言って拓人は玄関の扉を開け、購買へと走っていった。

「絶対相性悪いって…。」

私はため息をつきながら机に伏せる。

なまじ顔が似てるから、至近距離にいられると鼓動が速くなって困る。呼吸も浅くなるし、いつも通りの毒舌を繰り出すだけで精一杯だった。

顔が赤くなっているのを見られる前に離れられてよかった…。