七海学園高校のことは、テレビでしょっちゅうやってたから知ってた。
その斬新なシステムにメディアは飛びついて、その思い切ったアイデアは世間の目を掴んで離さなかった。

通称一攫千金婚校。男女がマッチングシステムによるペアを組み、世界一の夫婦を目指す学校で、"金の夫婦の卵"になれば大IT企業の社長になれるとか。

私だって、この学校に釘付けになった一人だ。ただし、皆が注目する一攫千金ではなく、男女がペアになって生活することに、だけど。

きっと、一緒に生活してしまえば、その人のことを好きになれる。

そして、初恋なんてすぐ忘れてしまえる。

そう思って入学したのに、超高性能なマッチングシステム"デステニー"が選んだのは、初恋の人に見た目だけそっくりな人だった。

「僕…鱸拓人っていいます…。よろしくお願いします…。」

そう言って、彼ーー拓人は、頬を掻きながら照れ笑いした。

やっぱり、私の初恋の人とは赤の他人なんだろう。名字も名前も全然違うし、雰囲気もうさぎとヘビくらい真逆だ。

私は、顔は似ているくせに似ていない性格を不満に思い、もともとへの字だった口元を更に歪め、

「鯖江葵。よろしく。」

と、無愛想に手を差し出した。