ヤマダさんも同じことを思ったのか、ケラケラと笑う。

「いやきっと、働く人たちのビルがあるんだろうけど」
「あ、ヤマダさんの働いてるビルもある?」
「あるある、危ない、そうだった」

高いビルに入っていくヤマダさんを想像する。……このモッズコートで?

あまり上手く想像出来なかった。

「ヤマダさんは、バンドで何の楽器やってるんですか?」

こちらを見てヤマダさんは自分の顎を掴む。何を考えることがあるのか。

「寧子ちゃんってあんまり音楽聴かない?」
「……なんでですか」
「なんとなく。ベースって楽器やってる。弦楽器」