空から私へ視線が移る。

「寧子せんぱい、優しいな……」
「あ、でも今日お財布忘れた」
「先輩頼りないな……。俺は、さっきのお釣りが」

ヤマダさんがポケットから小銭を出す。十円玉のみ。

「五円かける二人分として神様には見てもらおう」
「神様にその都合が通じるのかどうか」
「探し人は自分でどうにかするよ。なので寧子ちゃんがこれから男子に間違われる回数が減りますように」
「いやいやいや」

ぽい、とヤマダさんが笑いながら小銭を放った。冗談をよく言う人みたい。
ころんころんと音を立てて、賽銭箱の奥へ入っていく。

ゆっくりと、手を叩く。