時折見せるそのピンと張り詰めた雰囲気に、気圧される。

まあこの後、特に予定もないし。

駐輪場へ自転車を停めて鳥居をくぐる。

「ヤマダさんは観光?」

すれ違う観光客のような人々を見て、尋ねる。

「観光……ではないな、探す旅をしてる」
「何を?」

隣を歩くヤマダさんはこちらを向くことは無かった。

「うちのボーカルを探す旅」

ボーカル。
歌う人?

やっとこちらを向いたヤマダさんが苦笑する。

「俺、東京でバンド組んでて。ボーカルがさ、ある日突然どっか行っちゃったんだよ」
「ある日、突然」