それから数日後、肩のキスマークは呆気なく真崎さんに見つかってしまった。

お風呂上がりで暑かったので、私はノースリーブを着ていた。麦茶を飲もうと思ってダイニングへ向かうと、カフェで仕事中であるはずの彼がそこにいた。探し物をしているらしく、食器棚の下の扉の中を何やらガサゴソやっている。

「おつかれさまです」

「おう。おつかれ」

「何探してるんですか?」

「ああ、常連に使ってない新品の焼酎グラスあげようと思って。あ、あった」

 彼は小さな箱を手に取り立ち上がった。

「ん。美晴、おまえさあ…」

 彼は私の格好を上から下までじろりと見て顔をしかめた。

「そんな格好で外出歩いたりしないよな。肌見せすぎだぞ」

 彼の言う「そんな格好」というのは、ノースリーブにショートパンツのこの格好のことだ。

「しませんよ。家だからいいじゃないですか。お父さんみたいなこと言わないでくださいよ」

「お父さんだと?」

 彼は私の発言が気に食わなかったらしく、何やら肩を怒らせてじりじりとにじり寄ってきた。ダイニングテーブルに突き立てるように音を立てて箱を置いた。

「な、なんですか」

 私は麦茶のコップを両手で握り締めた。

 これ以上距離を縮められないというところまできたとき、彼はふと私の左肩に視線を移した。

「おい、なんだよこれ。ぶつけたのか?」

 彼は私の左肩を掴んだ。左肩には先日お風呂で自分でつけたキスマーク。

「こ、これは!違うの、その」

「その慌てようだと、どうやらぶつけたわけではないらしいな」

 お風呂上がりでまだ熱い体が恥ずかしさでますます熱くなる。

「まさかキスマークじゃないよな。誰かとしたのか、そういうこと」

 あからさまに挙動不審な私に不信感全開の彼。

手に持っていたコップを取り上げられ、さっきの箱よりも大きな音を立ててキッチンの天板の上にそのコップを置いた。さらに彼は私を囲うように天板に両手をついた。これでは逃げられない。

「正直に言いなさい」