ある夜、私はいつものようにひとりでお風呂に入っていたとき、ふと真崎さんのことを思い浮かべた。

 別に、そういう行為がしたいわけじゃない。真崎さんに、女として求められたい。  

 恋人同士の大事なスキンシップだよね?

 愛を確かめ合う大事なコミュニケーションだよね?

 真崎さんは違うの?


 もしかして、私のこと、そんなに好きじゃないのかなあ…?


 湯船にもたれかかり、天井を見上げた。

 一緒にいるのに、寂しい。天井が滲む。

 私のことをもっと求めてほしいと思うのは、わがままなのかなあ…。

 あなたはどんなふうに女の人を抱くの?
 
 別れた奥さんをどんなふうに愛していたの?

 娘さんがいたということは、つまり元奥さんともそういう営みをしていたっていうことだよね?

 でも、私とはしてくれないの…?


 元奥さんと比べて嫉妬するなんて、そんなの不毛なことだ。考えたくないのに、考える必要なんてないのに…。

 真崎さんの過去を含めて真崎さんのすべてを愛したいと思うのに、卑しい嫉妬心が顔を覗かせ、私の胸のあたりでモヤモヤと蠢いている。

 私は自分の両肩を抱いて、自分で自分の左肩にキスをしてみた。もう一度左肩に唇を押し当て、キスマークをつけた。

「バッカみたい」

 なんて、悲しいことしてるの、私ってば。自嘲気味に笑った。こんなのじゃなくて、真崎さんのキスマークがほしい。私は身体を湯船に沈めて、声を押し殺して泣いた。