彼の手は迷いなく私のパジャマのボタンに掛かる。もう目が暗闇に慣れたのだろうか?

 手際よくパジャマも肌着も脱がされてしまった。

「このままあなたに犯されてしまいたい」

「バカ言うな。病人に手を出すような趣味はないぞ。後ろ向け」

 固く絞った温かいタオルを首元から背中と腰にかけて這わせていく。

「腕と脇も拭いていいか?」

「はい」

 私は彼にされるがままだ。脇を拭いてもらったときはさすがにくすぐったくて笑ってしまった。

「前の方は自分で拭いてくれ」

「えー?」

「あー分かったよ。拭いてやるよ」

 彼はそのまま後ろから私の鎖骨あたりから拭き始めた。

「寒くないか?」

「少し…」
 暗闇の中、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされる。後ろから囁く彼の声、私の身体に触れる彼の手、背中に感じる彼の体温…。自分が彼にさせていることなのに、音が洩れてしまうのではないかと思うほどに胸の鼓動がうるさく鳴っている。

「もうすぐ終わるからな」

 言いながら彼は私の右乳房を愛撫するかのように円を描いてタオルで優しく撫でている。いや、私が過敏になっているだけで、本人はただ拭いているつもりなのだろうけど。

左胸を拭かれているときに、タオルが敏感になってしまった小さな突起に触れ、思わず身体がびくりと跳ねてしまった。

「ごめん、痛かったか?」

「いや、大丈夫です」

 色っぽい低い声で彼に囁かれ、頬は上気し首がすくむ。

「なんか変だぞ?」

 彼は笑いながら私のお腹を拭き始めた。

こんなにドキドキしているのは私だけ?

なんだか悔しくなってきた。