「汗、かいてるな。まだ風呂は入らない方がいいよな。身体拭く?」

「拭いてくれるの?」

 一瞬、彼が怯んだのが分かった。

「いいだろう」
 彼は小さな咳払いをした。

「ちょっと待っとけ。お湯用意してくるから、その間に着替え用意しとけよ」

「はい」

 電気をつけてクローゼットの中から新しい下着とパジャマを取り出した。まだ悪寒がするのですぐにベッドの中に潜り込んだ。程なくすると、数枚のタオルと湯気の立つボウルを抱えて彼が戻ってきた。私はまたのそのそと布団の中から這い出た。

「先に顔と手を拭きな。そのくらい自分でやれるだろ。ほれ」

「ん」

 お湯に浸けて絞ったタオルを手渡され、ゴシゴシと顔と手を拭いた。少しばかりさっぱりした気がする。

「背中拭いてやるよ。服脱げ」

 さっきから随分とぞんざいな言い方である。

少し不満だ。

「脱がせてください」

「はぁ?服くらい自分で脱げるだろう?」

「今日は甘えん坊なんです」

「ったく…」

 彼は眉尻を下げて、いかにも困った顔で頭を掻いた。

「電気消すぞ」

「なんで?」

「配慮だろうが」

「別に私は見られたって…」

「おまえには恥じらいというものがないのか」

 彼は部屋の電気のスイッチを消した。

途端に真っ暗になるが、彼の気配だけは感じる。

彼がベッドに座るとギシリとベッドが軋んだ。


「脱がすぞ」