「流花ー。聞いて!」

私とお揃いの黒いリュックを右肩にかけて、私の居る下駄箱まで走って来た繭は顔を真っ赤にして息を切らしていた。

「どうしたの?まさかのイケメンに告られた?」

「ちょっと違うけど間違ってないから、そのまさかだよ!」

「本当!良かったじゃん。そのイケメンって誰?」

「ありがとう!ちょっとここは人が多いから人が少ないところで話すね」

そう言って顔を手で隠す繭を見て、想じゃありませんようにと心の中で願ってしまった自分が憎くて仕方がなかった。

 いつの日か、繭に言ったあの言葉が頭の中で反復していた。