次の日、朝早い電車で東京に戻り、その足で母のいる病院に行った。
病室に入ると母はめずらしく身体を起していた。
「お母さん、今日は体調いいの? 」
「ああ楓、今日はいいのよ。少し起き上がってみたの。」
「そう、良かった。あのね、三崎家に行ってきたよ。」
「ありがとう。ダメだったでしょ? 」
「ううん、納骨許してくれた。お爺様もお婆様も優しかった。」
「そう・・・許されたのね・・・孫だからね、楓が行ったからだわ。」
「えっ。」
母はもっと喜ぶかと思っていたが、意外にも表情は少し硬かった。
「お父さん、あの家飛び出して自分のしたい仕事について、さらに許しも得ずに私と結婚してしまったから、あの家には近寄れなかったの。でも楓が生まれて3歳になった時にお父さんはこの子の為に一度三崎家に行くと言い出して、3人で行ったのよ。その時のお義父様の剣幕と言ったら凄くて、もう二度と敷居をまたぐなって言われたの。それっきり・・・その後電話をしても取り次いでもらえなかったのよ。」
「・・・そんなだったの・・・」
「今は歳をとられたし、楓が立派な女性になっていたから絆されたのね。かわいい孫だものね。・・・でも良かった、私もこれで安心だわ。」
「お母さん・・・」
母の辛い想いを知った。
決して母のせいではないけどずっと気にしていたのだ・・・私は今まで何も知らなかった。
三崎家に行く前にこの話を聞かなくてよかったと思った。
私はわざと明るく話した。
「お母さん、そういえば従妹の妙子さんに会ったよ。」
「そう。雄一さんとお父さんはずっと連絡はとっていたの。私も妙子さんに会ったことは無いけど妙子さんが生まれたときに雄一さんから写真付きの年賀状が来ていたわ。あなたより一つ年上のはずよ。」
「さっぱりしていていい人だった。」
「よかったわね。あなたに親戚が出来て良かった。」
母の言葉がなんとなく少し引っかかった。