朝、徹の腕の中で起きた。

「おはよう。平気?」

「ええ。」

「驚かせてしまったよね。俺はゲイじゃないんだ。店をやるのにその方がやりやすくてね。それに女運がないからもう恋はいいかなって。でもあんたはいい女だよ。どうする? 俺の女になる? 昨日最後までしなかったのは、やっぱり俺のこと好きになってもらってからと思ってね。」

「徹さん、ありがとうございます。・・・でも私ここを出ていきます。」

「そうか・・・やっぱり俺は女運が無いな・・・」

「ごめんなさい。また直哉さんが来ると思います。その時いない方が良いから・・・」

「わかったよ。でもあんた、死ぬんじゃないよ。いいね。」

「はい。」

私は携帯の位置情報をOFFにした。そして直哉さんの番号を着信拒否にした。


喪服を入れた紙袋を持ち、玄関で靴を履いた。徹の服を一着もらって着ていた。

「どこに行くか決めたの?」

「一度家に戻り大切なものだけ持って出ます。行先はまだ考えていません。」

「そうか・・・はい、これ俺の連絡先。寂しくなったら連絡して。行ってやるよどこでも。」

「徹さん・・・いろいろありがとう。」

徹は私を引き寄せ、力いっぱい抱きしめた。

「あーまったく、恋しちまったんだよあんたにさ。俺らしくない。・・・早くおいき・・・元気でね。」

「徹さんも・・・」

後ろを降り返らずに駅に向かって歩いた。


昨晩降った雨で道には水たまりが出来ていた。その水たまりに光があたりキラキラしてまぶしかった。