直哉さんの家で暮らす日々が増えていった。
そして、正志さんの納骨の日が来た。
正志さんの車を直哉さんが運転して佐原の坂口家へ二人で向かった。
四十九日の法要を坂口家で行い、その後墓に向かった。坂口家の墓も三崎家と同じ公園墓地にあった。
「三崎家の墓とは大違いだよ。」
お義父様が言った。
坂口家の墓は普通よりも立派だった。
「立派なお墓です。三崎家の墓がすごすぎるだけです。」
お義父様はだまってその言葉を聞いていた。
「それにしてもこの墓に正志が先に入るとは思いもしなかった・・・」
お義父様は寂しそうにそう言った。
「直哉、これからはあなたが坂口家を守っていくのよ。お父さんとお母さんをちゃんと見送って頂戴ね。」
お義母様は直哉さんにそう言ったが、直哉さんは口を横一文字にして墓を見つめていた。
坂口家に戻った。
「お父さんお母さんお話があります。」
私は焦った。
・・・直哉さんは話すつもりなのだろうか私たちのことを・・・
「僕は楓さんをずっと守っていきたいと思っている。兄貴に代わって守っていきたいんだ。いずれ結婚してこの家に戻ってここを継ぐ。だから認めてくれ。」
直哉は畳に頭をこすりつけるように頭を下げた。ご両親ともに言葉が無く、時間が過ぎていった。
「・・・認めません。私は認めない。」
お義母様は泣きながら台所の方に行ってしまった。
私はどうしたらいいのかわからなかったが、お義母様を追った。
「すみませんお義母様。まだ正志さんが亡くなって間もないのに・・・」
「楓さん・・・正志が亡くなったのはあなたのせいでないことはわかっているつもりです。でも、もう少し正志に気使ってくれていればこんなことにはならなかったんじゃないの。その上正志だけでなく直哉まで・・・直哉まで私から取り上げないで・・・お願い・・・」
いつも明るいお義母様がそう泣きながら言った。
・・・私のせい・・・取り上げる・・・そう思われていた・・・・・・
いたたまれなかった。
バッグを掴み坂口家を飛び出した。