正月の1日に正志の御実家に伺って、2日に三崎の家に、そして3日は父の墓参りに一緒に行くことにした。
その前に引越をしなくてはいけなかった。12月20日に内装が終わるという。
「楓、大変だけど引越を済ませて新居でクリスマスを祝おう。正月は出掛けないといけないから、クリスマスは家でゆっくりしたいな。」
「はい。新しいお家でパーティしましょう。楽しみです。」
母は日に日に弱っていった。
既に呼吸器を付けていた。
「三崎さん、あなたのウエディングドレス姿見せてあげられて良かった。いい写真も撮れたしね。お母さんよっぽど嬉しかったのか、僕らが病室に行くといつもその時の話をしているよ。」
「そうですか。先生のおかげです。」
「あのね三崎さん、お母さん年は越せると思うけど後は何とも言えない。」
「・・・はい、わかりました。それまで先生よろしくお願いします。」
余命を宣告された時もそうだった。先生の言葉はまるでドラマの中のセリフのように聞こえた。
こんなことを聞いたら取り乱すと思っていたけど、私は冷静に対処している。
覚悟が出来ているとは思えないのに・・・
・・・私は・・・
引越は2日間かけることにした。
事前に正志さんが念入りの計画を立ててくれた。
正志さんの家から持って行くものと私の家から持って行くもの全てのサイズを測り、図面に落とした。
そして荷物には番号のシールを貼って業者も直ぐにわかるようにした。
1日目の朝一番から正志さんの家から物を運び出した。
午後からは私の家から持ち出した。
正志の図面通りに配置が出来た。
正志さんが段ボールのリストも作ってくれたので、家具に物を戻すのも時間がかからなかった。
それでも夜には二人とも疲れていた。
「今日は外食にしよう。」
マンションビルの2階にあるファミレスに行った。
「さすがに疲れたね。明日はそれぞれの家に残したものの処分だ。午前中は僕の家だから僕だけが行くよ。たいして量もないからね。楓は家にいて。」
「一人で大丈夫ですか? 掃除とか・・・」
「大丈夫だよ。午後は楓の所だから、そこには二人で行こう。」
「すみません。助かります。」
「大家さんには何か持って行くの? 」
「はい。お世話になりましたのでお菓子でも・・・正志さんのところは? 」
「僕のところはいらないよ。楓のは明日午前中に買ったら。」
「そうしますね。それにしても内装素敵でした。シンプルで落ち着いていて本当に軽井沢のホテルみたいです。」
「僕のこと見直してくれた? 」
「フフッ、はい。とっても・・・」
正志さんとは全てのことで意見があったし、正志さんの提案は全て的を得ていた。
こんなに素敵な旦那様と結婚出来たなんて、なんて幸せなんだろうと改めて思うのだった。
正志さんはたっぷりのクリスマス休暇を取っていた。
夏にほとんど休みなして働いたのでその分を休まないといけないと笑っていた。
「少し買い物に行きたいね。新居の為の・・・クッションとか欲しくない? 横浜にインテリアのいい店があるからそこに行こうか。」
「はい。楽しみです。」
「そうだよね。あまりデートらしいことしていないものね。食べるか映画館で爆睡するか。ハハハ。」
「そうですね。買い物とかしたこと無いですね。買い物リスト作りましょう。」
二人はあまり物を増やさないと言うことを決めたうえで買い物リストを作った。
作っていくとインテリアが少しとその他は殆どが二人のペアの物だった。
街はクリスマスイルミネーションで飾られていた。
一番楽しい新婚の幸せ満開の時期だった。
横浜での買い物、新居でのクリスマス、最高の時がゆっくりと過ぎていった。
母のこと以外は・・・