今日は母と相続について話さなければいけない。

「お母さん、お父さんの相続手続きの件だけど、いろいろと揃えなければいけないものがあるの。生まれてからの戸籍とか、通帳全部とか・・・だから長野にも行かないとダメみたい。それと、相続の方法なんだけど、お母さん一人が相続する方法と、お母さんと私とで相続する方法があるんだって。どうしようか・・・」

「お母さんはよくわからないけど、二人で相続するのでいいと思う。その方が楓がすぐ使えるお金が増えるでしょ。」

「お母さん・・・ありがとう。そうさせてもらうね。それとね、この相続の手続きを会計事務所に頼もうと思っているの。私一人ではできないと思うから。費用は多くて10万位だって、どうかな? 」

「お母さんが出すから頼みなさい。あなたが苦労することは無いわ。」

「ありがとう、お母さん。これからいろいろ聞くことあると思うからよろしくね。」

「すまないね、楓にばっかり苦労掛けちゃって・・・」

「いいのよ。お母さんが早く良くなってくれれば私はそれでいいの。」

「楓、長野で困ったらヒロ君を頼りなさい。」

「ヒロ君ね・・・わかった・・・」

ヒロ君というのは高校時代の同級生で、家が近所だったし母親どうし仲が良かった。
母は知らないのだが、ヒロ君に告白されて私は振っていた。だから頼ることはしない。


夜、正志さんに電話をかけた。

「正志さん、今大丈夫ですか?」

「ああ楓さん、ちょっと待って直ぐかけなおす。」

正志さんは電話を切った。間もなくしてかかってきた。

「ごめんね。まだ会社なんだ、場所変えたから話して大丈夫だよ。」

「お忙しいところごめんなさい、では手短に。あの、母と相続の件を話しました。私と二人で相続することになりました。それと滝先生にお願いすることも了承を得ました。これは私から滝先生に連絡した方が良いですか? 」

「僕から連絡するよ。そして滝先生から楓さんに連絡を入れてもらうようにする。」

「わかりました。お手数おかけいたします。」

「何言ってるの。頼ってよ俺を・・・」

「ありがとうございます。本当に助かっています。それと、近々必要な物揃えに長野に行ってこようと思っています。」

「そうか、本当なら一緒に行ってあげたいんだけど、実はね、俺のいる事務所が大きなプロジェクトを仕留めたんだ。それで急に忙しくなった。9月末まではゆっくり会えないかもしれない。でもなるべく時間作るし、連絡は取れるからね。ゴメンネ。」

「いいえ、良かったですね。お仕事頑張ってください。私は大丈夫ですから。」

強がりを言った。
本当はすぐにでも会いたいし長野にも一緒に行って欲しかった・・・