次の日、お昼過ぎに坂口さんからメッセージが入った。
—つつじが丘の駅改札に18時45分でいいかな。お店の予約が19時になったから。
—はい、大丈夫です。楽しみです。
—僕もだよ。じゃあ夜にね。
こんなやりとりだけなのにドキドキしっぱなしだった。
・・・今日の夜大丈夫かしら、私・・・
この日、時間が経つのが遅かった。待ち遠しくて、何度も何度も時計を見た。
出かける予定の1時間以上前から着替えて化粧をして、バッグの中身を整えた。
何度も忘れものが無いか見直した。
そして、お礼のチョコは忘れないように玄関に置いた。
5分前には遅くともつつじが丘に着くように出掛けた。
あんまり早く行っても変なのかしらと思いながらも性格上早く行くことにした。
つつじが丘の駅の改札はひとつだった。
改札を出た正面に坂口さんが立っているのが人影から見えた。
私はそこに行くまでどんな顔をしてどこを見て歩けばいいのかわからなかった。気が付いているのに途中までは気が付いていないふりをして、今度は今気が付いたふりをしてペコッと頭を下げた。
・・・何をしているんだろう私・・・
と思いながら、ドキドキして彼のもとに向かった。
「お待たせしました。」
「俺も今来たところだよ。」
坂口さんは仕事帰りのスーツ姿だった。この前はラフな格好だったのでじっと見てしまった。
「なんか変? 」
「いえ、スーツ姿・・・かっこいいなって思って・・・」
「よかった、変なのかと思ったよ。真剣に見つめるから・・・」
「すみません。思わず見つめてしまいました。」
「楓さんって素直だよね。そうゆうとこ好きだな。」
さらっと言われて私は顔が赤くなった。
「さあ行こうか。」
坂口さんは歩き始めた。私は一歩後ろを歩いた。
すると坂口さんはさっと振り返り、手を差し伸べた。
「はい、はまるといけないからしっかりつかまってね。」
さりげなく出された手・・・ドキドキしながら指の部分をそっと触れるように掴んだ。
「・・・今日はかかとの太い靴にしました。」
「ククッ、そうなの? ホント可愛い。」
さらに赤くなったのが自分でもわかった。
「ここからはタクシーだよ、直ぐだけどね。森の中にあるレストランみたいなとこに行くよ。」
「森ですか? 」
「森というか木が多いとこだね。まあお楽しみに・・・」
二人はタクシーに乗った。レストランまでは10分もかからなかった。