でも、教室に戻れば席が隣なのでそこで話せるだろうと、道中は曖昧な笑みでクラスメイト達の話を聞き流した。
教室に入り、席に着いてようやくゆっくりできると胸を撫でおろす。
そしていざ、百合に声を掛けようと隣を向くと、またも邪魔が入った。
百合を見下ろしながら、女子生徒の二人組が高圧的な態度で詰め寄ってきたのだ。
内一人は、朝に騒いでいた紫音だ。
「ねぇあなた、そこをどきなさい」
「恐れ多くも、九条家の後継者である琴様の隣に座るだなんて。身の程を弁えたらどうかしら?」
「え、えっと…」
百合は戸惑った様子で、分厚いメガネの向こうにある目には涙が浮かんでいるようにみえる。
「早くどきなさいっ、何度言わせれば分かるの!?」
「見た目が冴えない上に鈍くさいだなんて救いようがないわね…」