琴が悩みながら何となく視線を下げると、最初に挨拶していた学園長と目が合ってしまった。
マズイ、とすぐに逸らそうとしたのだが、彼の視線に含まれたものに違和感を覚え、ついまじまじと見つめ返してしまう。
(憎悪…?嫌悪感…?)
そんな言葉では足りないような、もっと闇の深い何か。
厭悪(えんお)、唾棄(だき) 、忌諱(きい)、侮蔑(ぶべつ)…。
しかもそれは、私にだけではない、隣で話す麟太郎にまで向いている。
九条家全体に恨みがあるのか、私たち二人だけなのか。
麟太郎も学園長の視線に気づいているはずだが、素知らぬ振りを貫き通すつもりのようだ。
「琴に任せれば九条の今後も安泰じゃと儂は確信しておる。
跡目を狙う野心家な輩もおったようじゃがの…、お主らの心配には及ばんわい」
その言葉に学園長は眉をピクリと動かした。
どうやら図星らしい。