一体、何をする気なのか。
絶対に碌な事でないことだけは確信している。
琴はヒヤヒヤしながら麟太郎を注視する。
「…さて、この場を借りて皆(みな)に知らせておくことがある。
優秀な後進も十分育ってきたことじゃ、儂もそろそろ隠居生活に入ろうと思うておる」
麟太郎の口から語られた言葉に、会場内は今まで以上に騒がしくなる。
ここで落ち着いているのは琴ぐらい。
「き、急なお話ですね…。あ、安齋さんは事前に知っていたのですか?」
百合が胸の前で、左手を右手で包むように握りしめている。
驚愕して声も若干、震えているようだ。
「あぁ…、まぁ。それらしいことは言ってたかな…」
「そ、そうなんですね…」