「えー、最後は…、九条家の当主にして学園の理事長でもある九条 麟太郎様よりご挨拶を頂きたいと思います」

九条家の当主…、辺りから会場内がざわつき始めた。

琴も麟太郎の名前を聞いて驚きを隠せない一人だった。

つい先日会った時、麟太郎は入学式に出るなんて一言も言っていなかったのに。

(絶対わざとだ…)

麟太郎はサプライズとか何とか言って、嬉々としてこういうことをやるから油断できない。

心の中で呆れていると、百合は感激したような声を出す。

「す、すごいですね…。理事長様が表に出てくるなんて滅多にないのに。あ、もしかして、安齋さんがいるから、とか…?」

「うん…、どうだろうね…」

琴は百合の言葉に、絶対そうだと断言はせず、苦笑いだけに留めた。

彼女はまだ、私が九条家の跡取りだってことは知らないのだから。

ただ、九条家と関りがある人、としか思ってないはずだ。