「…心から忠誠を誓える、素晴らしい主人に出会えることを願っています。

その為に、自分の腕を磨く努力を惜しまず、精進していこうと思います。よろしく、お願いいたします」

軽く頭を下げて、日南は挨拶を終える。

私も大概短かったが、日南の挨拶はそれを超える短さだった。

(これは、いいのかな…?)

周りの様子を窺うと、琴と同じように考えた人たちの戸惑った表情が垣間見えた。

司会者の男性も、それで終わりですか?とでもいうように目を丸くしている。

疎らな拍手が日南に送られ、けれど日南の方はそれを気にした風もなくステージを降りた。

私もステージを降りて、自分の席に戻る。

「え、えー、続いてが最後のご挨拶になります」

司会者は戸惑いながらも自分に与えられた仕事を全うするため、式を先に進める。