(黒隠 日南)
怪しい行動が目立つ彼の名前を頭に刻み込む。
拍手のなかステージに上がって、主人科の琴から講演台を前にしてマイクの高さ調整をしてから挨拶を始める。
日南は司会者の陰になるように立って順番を待っている。
忍者らしく、気配を消すのが上手い。
「本日は私たち新入生のために入学式を行ってくださり、誠にありがとうございます。
こうして無事に新しいスタートを迎えられたこと、とても嬉しく思います。
これから新しい環境で勉学に励み、努力を惜しまずに邁進して参ります。
どうぞ教師の方々、関係者の皆様、先輩方に置かれましては、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
頭に叩き込んだ挨拶文を、何とか震えないよう噛まずに言い切った。
一歩後ろに下がって、頭を下げて終わりだ。
今日の琴の仕事はこれで終わったと言っていい。