そもそも、人前が苦手な人間に任せるべきじゃないと思う。
両親の事があって疑り深くなってしまい、何となく人付き合いを避けてきた自覚のある私に、
任せて良いことなど一つもないと叫んで、今からでも拒否したいところだ。
でも、今さらそんなことができるはずもなく。
「…ちょっと行って来る」
「う、うん。が、頑張ってね」
「ありがとう」
百合は控えめにガッツポーズをして応援してくれる。
それに背中を押されて人前に出る勇気をもらい、感謝しながら席を立つ。
琴と同じく名前を呼ばれて立ち上がったのは、琴を尾行していた男子生徒だった。
そのことに内心驚いたが、周囲に悟られないように、日南と目が合っても少し微笑んだだけで留めた。