狼と犬の人獣の区別はパッと見ではわからない。

獣人だと分かりやすいのだが、人獣は耳と尻尾だけで判別しなければいけないので難しい。


けれど本人たちの前で、特に狼獣人(人獣)の前で犬と間違えると烈火のごとく怒られる。

犬の先祖は狼なので、犬は狼の劣化版で、すべてにおいて圧倒的に自分たち狼の方が勝っていると考える者が多い。

弱いと思っている相手に間違われることほど屈辱的なことはないと、本気で説教されるらしい。


今だって犬と間違えた私を、耳の良い生徒会長は拾ったようで、一瞬チラッとこちらに目を向けた。

けれど流石にこの状況で狼であることの誇りを滔々と語るようなことはしない。


間違えたことを申し訳ないと思いつつ、距離も離れていることに加えて、

隣にしか聞こえないような小さい声だったのに、やはり狼の耳は伊達ではないと感心する。

「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。生徒会長を務めさせて頂いている、キリテ・ルーと申します」