ならば何故、金之助と目も合わせようとしないのだろうか。
今日知り合ったばかりだし、あんまり根掘り葉掘り聞くのも気が引ける。
「私でも、話しくらいはいつでも聞けるからね」
百合は何かを堪えるように小さく頷いて、呟くような声音で「ありがとう」と言った。
そして全員が席に着き終わり、入学式が始まった。
ステージに用意されたスタンドマイクを前にして、スーツを着こなした男性が司会者として話し始める。
「これより、私立宙星学園高校の入学式を始めさせていただきます。まずは学園長に挨拶を頂戴したいと思います」
拍手の中、後ろの席から歩いてきたのは、白髪交じりの髪を後ろに撫でつけた40代後半くらいの壮年の男性。
学園長という立場に着くには若すぎるような気がするが、それだけ実力があるという事。
ステージに上がった学園長は、講演台の上のマイクに顔を近づけて話し出す。
「えー、学園長を務めさせていただいている鬼柳 政太(きりゅう せいた)と申します。
新入生の皆様、ご入学、誠におめでとうございます。皆様にはこれから宙星学園の名に恥じぬよう…」