「あー、時間ないからちょっとだけな」
「先生のお家ってぇ、何の事業をしてるんですかぁ?早乙なんて会社ありましたっけぇ?」
わざとらしく首を傾げながら問いかけているが、早乙先生を見下しているのが見え見えだ。
他の生徒もクスクスと笑って、彼女に同調している。
要するに彼女が言いたいのは、
「どうせ私よりも格下の家なんでしょ?」「だったら、私に偉そうに指図とかできないでしょ」ってことだ。
隣を見ると、遅れてきた子は笑ってはおらず、ただどうすればいいか分からずオロオロしているだけだった。
(良かった、変に思ってるのは私だけじゃなかったか)
それに安心する一方で、教室の半数の生徒が教師をバカにしているこの状況はどうなのかと呆れの溜息が漏れる。
ここからだと、誰が笑っているのかいないのかが丸わかりだ。
先生はこれをどう収めるのだろうか。