「よーし、あと一人だな…」

早乙先生も入ってきて、腕時計を確認する。

私も黒板の上の壁に掛けてある時計を見てみると、入学式が始まるまで残り15分ほどだった。

移動時間も考えると、そろそろ出発しないと間に合わない。


「っはぁ、はぁ、すみませんっ、遅れました…!」

息を切らして入ってきたのは、分厚いメガネを掛けて頬に少しそばかすのある御下げ髪の女子生徒だった。

「ギリギリセーフだな。空いてる席に座れー」

「はぁ…、はぁっ、はい…」

その女子生徒は、右手に握りしめたハンカチで汗を拭いながらキョロキョロと辺りを見渡しているが、

みんな一様にこっちに来るなオーラを放って近づけないようにしている。

汗でも気になるのか、自分の近くにどうしても座って欲しくないようだ。