あれは結局誰だったんだろう。

近所の人ではなかったような…。

「…い、お~い。教室に着いたぞ?」

「ぇ、あぁ、すみません。考え事してて」

いつの間にか主人科・一年A組と書かれた教室のドアの前まで来ていた。

「大丈夫か?」

「全然大丈夫です。ちょっと昔の記憶を手繰り寄せてただけなんで」

「よく分からんが、空いてる席に座って待っててくれ」

早乙先生の言葉に頷いて、何かの花が彫られた木製のスライドドアを開けて教室に入る。

中は階段のように、上にかけて段差が高くなっていく造りになっていた。