更には寮専属のコンシェルジェ(フランス語)がいるのだ。

その名の通り、総合世話係として生徒たちの要望に応えられるよう常駐している。

「何かお困りの際は彼らに任せておけば大体のことは解決できるでしょう」

「あ、はい…」

中に入り、フロントに立つ男女に頭を下げられ、反射的に下げ返す。


フロントの前にはテーブルと椅子が十セットほど用意され、そこに何人か腰かけていた。

やけにジロジロ見られている気がするのは気のせいだろうか。

その横を通り過ぎて、クドがフロントの一人に声を掛けてカードキーを受け取る。

エレベーターにカードキーをかざして、開いたところで乗り込む。

扉が閉まって、クドがいくつかボタンを押すと動き出す。

「部屋に行くためにはこの暗証番号を入れてください。でないと動きませんので」

「分かりました」

「これは琴様の部屋に直結する専用のエレベーターです。他の方は基本的に階段を使われます」

エレベーターの右斜め前に、二階まで吹き抜けになった踊り場付きの両返し階段があったのでそこの事だろう。