「さっき柊哉の名前が聞こえたと思ったらすげぇ勢いでフェンスよじ登り出して引いたわ。マジ妖怪かと思った。なぁ?」

そう聞かれた隣のパートナーさんは気まずそうに首を捻りながら俯いた。


「やべーやつだろ?どう?俺たちとペア交換しない?」

「しません」


即答すると、時が止まった。


「……絶対?」

「絶対です。絶対に嫌です」

「……ふーん」


すると男の子はちょっと嬉しそうに立ち上がって、パートナーさんの手を取った。


「あ、警察と先生が事情は後で落ち着いたら聞くってよ。あと柊哉、ちゃんと病院行けよ」


そう言ってその2人はバスの方へと歩いて行った。


「そうだ、病院…!柊哉くん、立てる?」


私は柊哉くんを立たせようと腕を引っ張った。


「巡ちゃん」


柊哉くんは俯いたまま、私の手を握って引き留める。


「?」

「ごめん。俺、もう一個内緒にしてたことがある」

「……えっ」