「違うよ柊哉くん」

「……?」


どんな過去があろうと柊哉くんは誠実で、優しくて、爽やかな人だって

わかってたのに


私が体を前方に倒して柊哉くんの胸におでこをコツンとぶつけると、柊哉くんがビクッとした。


「ごめんね」


身勝手な理由で、こんなに優しい人を傷つけた。


「ごめんなさい」


目を閉じると、ポロ、と雫がひと粒落ちた。


「……巡ちゃ、」

「好き」


私のか細い声に、何か言いかけていた柊哉くんが息をとめた。

この気持ちが柊哉くんにちゃんと届くように、私はシャツの裾を掴む手に力をこめる。


「どんな柊哉くんも好き。大好き。もっと知りたい。私の知らない柊哉くんのこと。柊哉くんの内緒、もっと教えて欲しい……だから」


もう逃げたりしない。

大好きな柊哉くんの全部を受け止めたい。


「行かないで」


柊哉くんはしばらく沈黙すると、はぁー……と大きくため息をついた。

どういう心情から出たため息なのかわからず不安になって、私は顔をあげ、


「待って」


……ようとしてそれを柊哉くんの右手に頭の後ろを抑えられて阻まれた。

思ったより心音の大きい柊哉くんが、小さな声で私の頭に呟く。


「好きな子にそんなこと言われたらヤバいから……見ないで」