「んのアマ!ただじゃおかねぇ!!」


しゃがれ声の男がすぐに追いついて私の腕を掴んで引っ張る。

私は恐怖で閉じようとする声帯を必死に震わせて声をあげた。


「っ、やめて…!私は…っ、」


誘拐なんてされてる場合じゃない。怖がってる場合じゃない。


「柊哉くんを迎えに行くんだから!!」










「巡ちゃん!!」



「……!」




空から降ってきた声に反射的に顔をあげた。


二階建てビル程の高さはある塀の、更にその上にある柵の上に、人影。

背中に眩しい太陽を背負うその人が、躊躇なく飛び降りた。


「……!」


その姿は、キラキラかっこいいヒーローそのもので。

かっこよすぎて、心臓が止まった。