私は自分の足を固定しようとしている男に、力の限り強い蹴りをお見舞いした。

「あっ……!?」

どうやら急所の股間に入ったようだ。

「っ、てっめぇ…!!」

男が怯んだ隙に、縛られている両手で頭に被せられていたものをなんとかして脱ぐと、またしても私を抑え込もうとのびてきた男の腕を思い切り噛む。

「ッイ!!」

悶絶する男の声に、運転席のもう一人の男が慌ててブレーキを踏んだ。

「おい、大丈夫か!?」

私はなんとか車のドアをあけて、外に飛び出した。


「おい!待て!!」


無我夢中でガクガクと震える足を前へ前へと運ぶ。

全速力で走りたいのに、泥の中みたいに足が重く感じる。


はやく、はやく、動いて私の足……!


「あ…!」


足をもつれさせた私は坂の途中で転んだ。