今逃げないと、取り返しがつかなくなる……!

必死で男を蹴って抵抗すると、男は私の手首を座席に強く押し付けた。

「っ……、」

「大人しくすれば何もしないって言ってんじゃん…?」

気持ち悪い猫なで声に、また鳥肌が立った。

ガタガタと体が震えて冷や汗が噴き出す。


「怖いよねー?いい子にちてようねぇ」


嫌だ、気持ち悪い、気持ち悪い…!


無情にも車はエンジン音を鳴らして発車する。



『もう一人にしないから』

頭に添えられた柊哉くんの優しい手を思い出した。


「っ……、」


……会いたい。

行かなきゃ。

来てもらうんじゃなく、私が、むかえに行かなくちゃ…!