「……?ここであってますか……?」


何もない。

見渡しても店らしきものもなく、何かの事務所が入った雑居ビルとその前に停まる黒いワゴン車があるだけ。

遊園地の近くだというのに、人通りも全くない。

こんなところになんの用だろう?

「ウンウン!アリガトネータスカッター!」

女性が私の手を取り、満面の笑みで感謝の言葉を並べる。

「いえ。じゃあ私はこれで失礼しますね」

柊哉くんの元へ行こう。

もしかしたらまた怖くなって震えちゃうかもしれないけど。うまく喋れないかもしれないけど。

ちゃんと謝って、言わなくちゃ。


「アリガトーアリガトー」

女性はまだお礼を言いたいのか、手を離してくれない。

「あの、すみません、今から行かなきゃいけないところがあって…」

「ヤーヤー、本当にアリガトウネー」

女性はやっぱり手を離してくれない。

手の力、強い。

女性の目が笑ってないことに気がついて、得体の知れない不安に襲われた、その時だった。

近くに停まっていた黒いワゴンの扉が勢いよく開いて、黒づくめの男2人が飛び出してきた。


「!?」


あっという間に羽交締めにされ、頭に何かをかぶされて真っ暗になり、訳がわからないままずるずると引っ張られてしまう。