「……」


必然的に相当な方向音痴である彼のことを思い出してぼーっとしてしまう私に、女性が首を傾げた。

「あっ、お、OK!レッツゴー」

私は慌てて笑顔で言って、遊園地の高い塀に沿って歩き始めた。

そしてさっきよりは幾分冷静になった頭で彼のことを考える。


そういえば柊哉くんとまともに話せるようになったのは、柊哉くんが迷子になったのがきっかけだった。

勢いで七海学園に入った私は、やっぱり生の男の子は怖くて近づけなくて……そんな私に柊哉くんは、なんで来たんだとか文句の一つも言わずに少し離れたところにただ、いてくれた。

ホームシックになって眠れない夜は朝まで一緒に映画を見てくれたり、

おじいちゃんの淹れるカフェオレが恋しいとぼやけば色々調べてカフェオレを淹れてくれたり……

なんでそこまでしてくれるのって聞いたら、

『なんか、笑ってほしくて』

って飾らない言葉で言われてドキッとして。