「何かご用ですか?」


丁寧な言葉遣いと裏腹に明らかな敵意の混ざった低い声。


「柊哉くん……!」


私の、運命の人。

柊哉くんは少し息を切らして力強く男の人の手首を掴んでいる。

眼鏡の奥の冷静にも見える鋭い眼光は男の人たちをまっすぐに捉えて離さない。

「は?彼氏いるならはやく言えよ」

男の人たちが舌打ちして去って行くと、私は無意識に止めていたらしい息を大きく吐いた。


「……大丈夫?」


さっきとは違う、柔らかく包み込むような声。
柊哉くんがサラサラな色素薄めの髪を揺らしてしゃがみ、綺麗な二重幅の目を心配そうに細めて私の顔を覗き込んでいる。


「っ…、うん、大、丈夫」


ドキドキと高鳴る胸をおさえながら何度も頷くと、柊哉くんがホッと顔の力を緩ませた。


「遅くなってごめん。もう一人にしないから」


そう言って私の頭に大きな手をぽん、と置いた。


「っ……、」