「…入学直前に喧嘩して取り消しになった」

「は?お前よくそれで七海来れたな」

「学園長が拾ってくれたんだよ。面白そうだからって。でも相手の子が怖がるから見た目だけなんとかしろっつって」

「それでその眼鏡?安直だなー」

「うっせぇな、加減がわかんなかったんだよ。それに……」


俺ははじめて巡ちゃんと会った日のことを思い出す。


「……俺は誠実で優しくて、爽やかな男じゃないといけなかったんだよ」


はりぼての俺に顔を赤くして震えながら挨拶してきた巡ちゃんは、はじめてケージの外に飛び出してしまった小動物みたいだった。

ただでさえ男の人が怖いという彼女の前に、ありのままの俺で出ていくことなんて到底できなかった。