⚪自宅·リビング

ムスッとした顔でパンにかじりつく真理。



「全く。朝から何事かと思ったじゃない」



目の前から聞こえる声に,顔を上げる。

眉を寄せ,真理と同じ朝食を摂る母。

真理とよく似ている。

その真理母の隣に座っている凪。

にこにこと真理を眺めている。

目をそらして,食事を再開する真理。



「だって凪が……」



ご飯を1口口にいれて,また考え込む。

(お母さんが,娘を抱き締めながら隣で寝る男の肩を持つ)

(そんな母親の風上にも置けない事をする理由は昔から1つだけ)



「いつもの事じゃない…婚約者なんだし別に困らないでしょ?」



真理をみもせず言う母。

食事を終えた真理が,諦めて食器を片しに行く。

(私が決めたんじゃないのに…)

(そもそも社長令嬢でも令息でも何でもない私たちが,なんで今時婚約なんて…)

カチャリと食器をシンクに置く真理。

(どうしたら,解消できる?)

母と凪を見つめた。

(やっぱり,凪は変態だ)

こくりと頷く。

⚪(回想)凪の普段の様子。

登下校,隣で笑う凪。

夕食に凪。

真理の食器洗いを止めて,代行する凪。

誕生日プレゼント朝一番に持ってくる凪。

⚪回想終了

(いつも私に優しくて,ひたすらに優しくて)

(それは私がどう在ろうと関係ない)

(そんなところがすごく気持ち悪い。だから)

(やっぱり凪は変態)


水に浸けられた食器。

傾いた茶碗から,水が垂れる。

戻ろうと動く真理。

真理の前で,自分の食器を持って微笑む凪。