睡魔と戦いながらも、何とか午後の授業を乗り越えることができた。

その放課後。

オレはまっすぐ家に帰った。

しばらく部屋の掃除をしていると、ドアのベルが鳴った。

ピーンポーン。

家賃が比較的安いアパートに住んでいるので、ピーンポーンという音は電子音ではなく、アナログな音が鳴る。

覗き穴を覗かないと、誰が来たかも分からない。

将来はオートロック付きマンションに住みたい。

とはいえ今日に関しては、覗き穴を確認しなくても、家に誰が来るかくらいは分かっている。

もう部屋はほとんど汚れていない。

掃除をやめて、ドアの鍵を開けに行った。

『よぉ。』

家に入って来たのは、友達のジロウだ。

今日も遊びに来た。

制服を着ているので、学校からそのまま来たようだ。

『はやいな…。』

『今日は部活ないからな。これお菓子な。ん?何かすげー眠そうだな。寝てないの?』

そう言ってジロウは、お菓子の箱がたっぷりと詰まったレジ袋をオレに渡した。

寝てないアピールをしているつもりは一切なかったけど、眠そうに見えたようだ。

実際のところ、めちゃくちゃ眠いし。

『色々あってな…。』

『まさか…。二股バレたとか?』

『…。』

『え、おいマジで?冗談で言ったんだけど、マジかよ?』

無言になってしまった。

そんなオレを見て、ジロウが慌てている。

『…それは大丈夫だ。一旦座ろう。何か飲む?コーヒーでいいか?』

『おう…。じゃあコーラで。』

『ウチにコーラはない。』

ジロウはローテーブルの前に座った。

オレは自分用のホットコーヒーとジロウ用のオレンジジュースを用意して、テーブルに運んだ。

オレンジジュースは客人用として、常に置いている。

『サンキュー。なぁ。聞いてもいいなら、何があったか教えてくれよ?』

ジロウが静かにそう言った。

確かに、ジロウなら力になってくれるかもしれない。

優しい奴だし、噂によると、最近彼女ができたらしい。

厳密に言うと、噂になっているのは彼女の方だけなんだけども。

ジロウの彼女は学園内だと少しだけ有名だ。

理由は部活動で大活躍をしているから。

テニス部の強い子に彼氏ができた、という部分だけが広まっている。

とはいえ、ジロウには恋愛経験がある。

良いアドバイスをくれる…?

『実は…。』