10月になった、ある日の放課後。

オレはアヤと、高校の最寄りの駅前にあるファーストフード店で一緒に食事をしていた。

当然のことながら、放課後デートも慎重に行う。

まず、必ず現地集合だ。

絶対に下校は一緒にはしない。

うっかり目撃された時に、関係性を質問されたとしたら…。

シオリでもアヤでも本人を前に『友達だよ』なんて言えば、全てが終わる。

学校の近くでデートをすると、彼女達の友達に目撃される可能性もある。

しかし、堂々としていれば意外とバレない。

というよりは、恐らくオレに対してはそこまで興味を持ってはいない。

そして、どちらかと放課後にデートをする際は、もう1人の予定も確認する。

今日はシオリが部活動があることを確認済みだ。

帰り道にシオリと遭遇するとまずいので、部活動の終了時刻でデートの終了だ。

食事をしながら、放課後の幸せなひと時を楽しんでいた。

『あっ。ポテト取らないでくださいよ!』

『他人のポテトってめっちゃうまいよな?』

『ひどいです~!』

『ナゲットあげるから許して。』

『ん。じゃあ許します。後、デザートもくれたならもっと許します。』

『なんでだよ…。』

そう言って落ち込んだフリをしたオレは、追加のデザートを注文した。

『ほいよ。ソフトクリーム。』

『…ほんと、先輩はわたしに甘いですよ!』

『何が?これはポテト盗難罪の罰だよ。』

『そういうのですよ~!』

アヤは見るからに嬉しそうだ。

このソフトクリームみたいに甘い時間を大切にしたい。

…きもちわるっ。

口には出していないからセーフだ。

追加注文したデザートを食べながらアヤは、オレに尋ねた。

『そう言えば、先輩。27日って空いてます?』

『27日か。多分空いてると思うけど。どっか行きたいの?』

ほとんど空になったアイスコーヒーのカップをすすりながら尋ねると、アヤは申し訳なさそうに答えた。

『実は…わたしの誕生日なんです。あっ。プレゼントほしいとかじゃないですよ?そこは誤解しないで下さいね?』

『誕生日…。』

『はい…。それでその…。ただ一緒にいて欲しいだけなんです…。わたしのわがまま、聞いてくれますか?いて欲しいだけです…!』

なるほど。

確かに10月が誕生日だった気がする。

別にそれくらいは、わがままではないと思う。

カノジョが持つ権利だ。

それに、アヤの明るい顔の裏には寂しさがある。

断る理由が見つからない。

『あいよ。そんなおめでたい日、お祝いするっしょ?念の為、予定を確認してからまた連絡する。』

『はい!ありがとうございます!やった!』

アヤは喜びの声を上げた。

喜び過ぎだろ。

ちらっと時計を見た。

そろそろデート終了だ。