「ドラマや映画に出演した経験は何回もあったけど、全部お母さんとの共演だった。神山愛子への忖度と、あとは話題作りのためだろうね」




本当にくだらない。

演技をすることがあんなに好きで好きでたまらなかったわたしが、大人たちのそういう部分に触れていくうちに、だんだん楽しく思えなくなってしまった。


才能があって努力もしているのに、大人たちはお母さんしか見ていない。


それでも、努力し続けていればいつかは……という気持ちも一応あった。



だけど。母親ではなく神山ミズキ自身を認めてもらえるようになるより前に、わたしは音を上げた。




「いつもみたいにレッスンに行ったある日ね、突然セリフを覚えられなくなったの」




学校の勉強はそれまで通り問題なかった。

ただ、台本だけが覚えられなくなってしまった。


泣きながら徹夜で覚えようとしたこともあったけど、結局ダメで。




「あの頃、わたしは自分の価値なんてお芝居ができること以外にないって思ってた。その価値も自分じゃなくてお母さんの価値になってしまってたわけだけど。……でも、その芝居すらできなくなったら本当に何も価値のない人間になった気がして、心が壊れかけた」