「ご機嫌ですね、若。」


「なになに〜?いい事でもあったの〜?」



車を降りた時とは真逆に。
機嫌が良さそうな俺を見て、側近の2人は気になっているようだった。


教えてやるものか。
俺が見つけた、俺の唯一無二の色を。

目を閉じれば思い出す。
俺が触れたら、顔を赤くして照れたような顔をしたことも。ほのかに香った石鹸の香りも。



「……十葵(とき)。」


「なに?」


「さっきの公園に、藤のハンカチを落としてきてる。
探しに行ってきてくれ。」


「はあ!?あれを落とした!?
お前、あれの価値分かってんのか!?」


「…分かってる。」



賭けだった。
あの女が、どういう女かは分からない。
普通の人間からしたら、あのハンカチの意味はまず分からないからそのまま持っていくかもしれない。
なんなら、落ちていても気づかず放置されてるかもな。